Secret Lover's Night 【連載版】

ダイニングテーブルに、三つ並んだどんぶり。昨日の夕食で使った材料の余りで、智人は手早く親子丼を作った。

「どーぞ」
「いただきまーす!」

どうやら食欲はあるらしい。さすが食いしん坊なだけある。と、元気良く響いた千彩の声に智人はふっと小さく笑い声を零した。

「千彩、夜は何食べたい?」
「えっとね…」

うぅんと考えると、ピタリと手が止まる。それを「子供か」と笑いながら、智人は隣に座る悠真を肘で小突いた。

「食えよ?」
「あぁ、うん。いただきます」

余程晴人のことが気になるのだろう。悠真はずっとうわの空で。まぁ、無理もないか…と、ジーンズのポケットに押し込んでいた携帯を引っ張り出し、智人はテーブルの上を滑らせた。

「そんな気になるんやったら後で電話しろや」
「おぉ!」
「あ・と・で・な」
「…おぉ」

浮いたり沈んだり、とにかく悠真の気分は忙しい。中学時代から変わらんな。と笑う智人に、悠真はむぅっと膨れっ面で答えた。

「子守りは千彩で手いっぱいやぞ」
「俺はもう26や!」
「はいはい」

そんな二人のやり取りを見ながら、今度は千彩が噴き出した。

「ん?何笑うてんねん」
「何かね、ともととゆーま、はるとけーちゃんみたい」

千彩の知る晴人と恵介は、いつでもこんな調子で。

口煩い晴人と、叱られてむぅっと膨れっ面をする恵介。いつだって二人は自分に優しく笑いかけてくれたけれど、口論をすることも多かった。

それでも、今までボス以外の誰とも「友達」という関係を築いたことのなかった千彩には、二人の関係が羨ましかった。