「どうぞ」
「ありが…とう」
「俺、悠真。智人の友達やねん」
「うん。ともとが言ってた」
「ちーちゃんって呼んでええ?」
「うん」
コクリと頷く千彩の唇は、血色を失って白くなっている。早く飲むように促し、悠真は晴人に叱られて俯く智人の肩をポンッと叩いた。
「代わって?」
「…おぉ」
渡された携帯を前に、逸る気持ちを抑えつける。晴人は今怒っている。けれど、久しぶりに晴人と会話をしたい。
憧れの「晴人にーちゃん」は、いつ如何なる時でもカッコイイのがセオリーだった。
「晴人にーちゃん」
『おぉ、悠真か』
「ごめん。俺が急に来てん」
『責任持って子守りしとけ。明後日帰るから』
「わかった」
『そいつ、俺の彼女やから』
「うん。智人から聞いた」
『何かしてもあかんし、どっかやってもあかんぞ』
「うん」
『ほな、任せたぞ?』
「大丈夫。もう絶対独りにせんから」
憧れの晴人が、自分に任せてくれる。それだけで悠真は嬉しくて。ゆっくりとカップを傾ける千彩に携帯を渡し、にっこりと笑って未だ俯いたままの智人の頭をよしよしと撫でた。
「はるー?」
『ちゃんと智に一緒におってくれるように言うといたから、ええ子にしててな?』
「うん」
『明後日帰るから』
「うん。はる、ごめんね?」
『ちーちゃーん!』
「え?けーちゃん?」
突然電話口に現れた恵介に、千彩は驚いてビクンと肩を跳ねさせた。そんなこととはつゆ知らず、電話口の恵介は何やら泣きながら言葉を紡いでいる。
「けーちゃん、何言ってるかわからへん」
『あーもうっ!お前はあっち行っとけ!ちぃ、ちゃんとええ子にしとくんやで?』
「うん」
『ほな、明後日な』
「うん。またね」
やはり寂しいのだろう。通話の切れた携帯を見つめながら、千彩は今にも泣き出しそうになっていて。スリスリと智人に擦り寄り、潤んだ猫目を瞬かせた。
「ともと、出て行ってごめんなさい」
「いや。独りにしとった俺が悪かった」
「ちさ、おったあかんのやと思って」
「そんなことあらへん。ごめんな、千彩」
擦り寄る千彩の背中をポンポンと叩きながら、智人までもが泣き出しそうで。そんな二人を見て「あーあ…」と洩らした悠真は、バツの悪さに二人から視線を逸らした。
「ありが…とう」
「俺、悠真。智人の友達やねん」
「うん。ともとが言ってた」
「ちーちゃんって呼んでええ?」
「うん」
コクリと頷く千彩の唇は、血色を失って白くなっている。早く飲むように促し、悠真は晴人に叱られて俯く智人の肩をポンッと叩いた。
「代わって?」
「…おぉ」
渡された携帯を前に、逸る気持ちを抑えつける。晴人は今怒っている。けれど、久しぶりに晴人と会話をしたい。
憧れの「晴人にーちゃん」は、いつ如何なる時でもカッコイイのがセオリーだった。
「晴人にーちゃん」
『おぉ、悠真か』
「ごめん。俺が急に来てん」
『責任持って子守りしとけ。明後日帰るから』
「わかった」
『そいつ、俺の彼女やから』
「うん。智人から聞いた」
『何かしてもあかんし、どっかやってもあかんぞ』
「うん」
『ほな、任せたぞ?』
「大丈夫。もう絶対独りにせんから」
憧れの晴人が、自分に任せてくれる。それだけで悠真は嬉しくて。ゆっくりとカップを傾ける千彩に携帯を渡し、にっこりと笑って未だ俯いたままの智人の頭をよしよしと撫でた。
「はるー?」
『ちゃんと智に一緒におってくれるように言うといたから、ええ子にしててな?』
「うん」
『明後日帰るから』
「うん。はる、ごめんね?」
『ちーちゃーん!』
「え?けーちゃん?」
突然電話口に現れた恵介に、千彩は驚いてビクンと肩を跳ねさせた。そんなこととはつゆ知らず、電話口の恵介は何やら泣きながら言葉を紡いでいる。
「けーちゃん、何言ってるかわからへん」
『あーもうっ!お前はあっち行っとけ!ちぃ、ちゃんとええ子にしとくんやで?』
「うん」
『ほな、明後日な』
「うん。またね」
やはり寂しいのだろう。通話の切れた携帯を見つめながら、千彩は今にも泣き出しそうになっていて。スリスリと智人に擦り寄り、潤んだ猫目を瞬かせた。
「ともと、出て行ってごめんなさい」
「いや。独りにしとった俺が悪かった」
「ちさ、おったあかんのやと思って」
「そんなことあらへん。ごめんな、千彩」
擦り寄る千彩の背中をポンポンと叩きながら、智人までもが泣き出しそうで。そんな二人を見て「あーあ…」と洩らした悠真は、バツの悪さに二人から視線を逸らした。

