秋の夕日は、あれよあれよという間に落ちてしまう。大好きな茜色の空が藍色に代わり急に肌寒さが襲ってきて、ブランコに腰掛けていた千彩はしゅんと肩を落とし、独りぼっちになってしまった公園内を見渡した。
「はるぅ…」
晴人の家に居た頃は、空が茜色に染まる頃には「ちぃ、ただいま」という声が玄関から聞こえてきた。
晴人を見送る時の晴天と、「おかえりー!」と駆け寄る時の茜色の空。どちらが好きかと問われれば、やはり帰って来てくれる茜色の空だった。
「はるぅ…お家帰りたいよぉ…」
ブランコに腰掛けたまま語らない友達を腕に抱き、千彩はグスッと鼻を啜る。
一人で外に出てはいけないと幼い頃から言われているのだけれど、どうしたとて家に居辛い時もある。例えば母と吉村が言い争いをしている時や、ボスが知らない人達を沢山連れて来た時。そんな時、決まって千彩は一人で家を抜け出した。
「ママ、おにーさま、ボス、はる、けーちゃん、メーシー、マリちゃん、パパ、まま、おねーちゃん…ともと」
知っている限りの人物の名を並べ、その中で迎えに来てくれそうな人物の顔を思い浮かべる。
「はる…」
「千彩ー!」
小さく押し出した声と自分を呼ぶ声が重なり、千彩は慌てて顔を上げて立ち上がった。
「はるっ…はるっ!」
公園を飛び出したものの、そこに求めていた人物の姿は無い。その代わりに、息を切らせた智人が道路の向こう側で自分の名を呼び続けていた。
「ともと…」
帰るべきか、このまま公園に戻るべきか。迷って俯いた千彩の肩を、ガシッと掴んだ人物がいる。
「ちーちゃんっ!」
声も出せないくらい驚いた千彩に、その人物はにっこりと笑って大声を張り上げた。
「智人ー!おったでー!」
その声に、車が途切れたタイミングを見計らって智人が駆けて来る。
「はるぅ…」
晴人の家に居た頃は、空が茜色に染まる頃には「ちぃ、ただいま」という声が玄関から聞こえてきた。
晴人を見送る時の晴天と、「おかえりー!」と駆け寄る時の茜色の空。どちらが好きかと問われれば、やはり帰って来てくれる茜色の空だった。
「はるぅ…お家帰りたいよぉ…」
ブランコに腰掛けたまま語らない友達を腕に抱き、千彩はグスッと鼻を啜る。
一人で外に出てはいけないと幼い頃から言われているのだけれど、どうしたとて家に居辛い時もある。例えば母と吉村が言い争いをしている時や、ボスが知らない人達を沢山連れて来た時。そんな時、決まって千彩は一人で家を抜け出した。
「ママ、おにーさま、ボス、はる、けーちゃん、メーシー、マリちゃん、パパ、まま、おねーちゃん…ともと」
知っている限りの人物の名を並べ、その中で迎えに来てくれそうな人物の顔を思い浮かべる。
「はる…」
「千彩ー!」
小さく押し出した声と自分を呼ぶ声が重なり、千彩は慌てて顔を上げて立ち上がった。
「はるっ…はるっ!」
公園を飛び出したものの、そこに求めていた人物の姿は無い。その代わりに、息を切らせた智人が道路の向こう側で自分の名を呼び続けていた。
「ともと…」
帰るべきか、このまま公園に戻るべきか。迷って俯いた千彩の肩を、ガシッと掴んだ人物がいる。
「ちーちゃんっ!」
声も出せないくらい驚いた千彩に、その人物はにっこりと笑って大声を張り上げた。
「智人ー!おったでー!」
その声に、車が途切れたタイミングを見計らって智人が駆けて来る。

