「はる、はるっ。ともと怒ってなかった?」
『大丈夫や。ちゃんと教えてくれる言うとったからな』
「ほんまに?」
『おぉ。せやから、わからんかったらちゃんと教えてもらいな?』
「うん!」
『パパとママがおらん間、智と二人で大丈夫か?』
「うん!大丈夫!」
『よし。ええ子にしとくんやぞ?お土産持って帰るからな』
「うん!待ってるね!」
携帯相手に手を振りそうなくらいにご機嫌な千彩は、もう完璧に笑顔が定着している。それにホッと胸を撫で下ろし、智人はくしゃりと千彩の頭を撫でた。
「ともと、ごめんね?ちさ、あほやから」
「おりこーなんやろ?」
「うーん…」
「おりこーや。おりこーな千彩は、一人で留守番出来るか?」
「うーん…」
「まぁ、ええわ」
ああ言われてしまえば、放っておくわけにはいかない。いくら外見が少女だろうと、いくら中身が幼児だろうと、大好きな兄に任された大事な「結婚相手」なのだから。
再び携帯を開く智人に、千彩は「はる?はるっ?」と期待に満ちた眼差しを向ける。それに黙って首を横に振り、智人は目的の人物が出るのを待った。
『はいよー』
「おー。ごめん、今日と明日練習休む」
『ん?何かあったん?』
「んー…兄貴に子守り頼まれた」
『子守り?晴人にーちゃん、子供なんかおったっけ?』
「おぉ。でっかいガキがな」
ため息を吐く智人の覗き込み、千彩の瞳が不安げに揺れた。また泣き出されては堪らない!と、猫のように喉元を撫でると、気持ち良さげにゆるりと猫目が細まる。
「ってわけで、欠席で」
『新曲出来た?』
「んー…そこそこ」
『ほな、それ聴きに行くって名目で俺も欠席』
「は?」
『たまには休みも必要やって。二人には俺から言うとくから』
「ちょっ…!」
智人の言葉を聞かず電話を切った友人は、誰よりも練習熱心なはずのボーカリストで。中学時代からの同級生なだけに、当然のことながら晴人のことも知っている。そして、ふと思い出した。自分よりもその友人の方が、晴人に強い憧れを抱いているということを。
「失敗した…」
ボソリと洩らす智人を不思議そうに見上げながら、千彩は膝の上でご機嫌にゴロゴロと喉元を撫でられ続けていた。
『大丈夫や。ちゃんと教えてくれる言うとったからな』
「ほんまに?」
『おぉ。せやから、わからんかったらちゃんと教えてもらいな?』
「うん!」
『パパとママがおらん間、智と二人で大丈夫か?』
「うん!大丈夫!」
『よし。ええ子にしとくんやぞ?お土産持って帰るからな』
「うん!待ってるね!」
携帯相手に手を振りそうなくらいにご機嫌な千彩は、もう完璧に笑顔が定着している。それにホッと胸を撫で下ろし、智人はくしゃりと千彩の頭を撫でた。
「ともと、ごめんね?ちさ、あほやから」
「おりこーなんやろ?」
「うーん…」
「おりこーや。おりこーな千彩は、一人で留守番出来るか?」
「うーん…」
「まぁ、ええわ」
ああ言われてしまえば、放っておくわけにはいかない。いくら外見が少女だろうと、いくら中身が幼児だろうと、大好きな兄に任された大事な「結婚相手」なのだから。
再び携帯を開く智人に、千彩は「はる?はるっ?」と期待に満ちた眼差しを向ける。それに黙って首を横に振り、智人は目的の人物が出るのを待った。
『はいよー』
「おー。ごめん、今日と明日練習休む」
『ん?何かあったん?』
「んー…兄貴に子守り頼まれた」
『子守り?晴人にーちゃん、子供なんかおったっけ?』
「おぉ。でっかいガキがな」
ため息を吐く智人の覗き込み、千彩の瞳が不安げに揺れた。また泣き出されては堪らない!と、猫のように喉元を撫でると、気持ち良さげにゆるりと猫目が細まる。
「ってわけで、欠席で」
『新曲出来た?』
「んー…そこそこ」
『ほな、それ聴きに行くって名目で俺も欠席』
「は?」
『たまには休みも必要やって。二人には俺から言うとくから』
「ちょっ…!」
智人の言葉を聞かず電話を切った友人は、誰よりも練習熱心なはずのボーカリストで。中学時代からの同級生なだけに、当然のことながら晴人のことも知っている。そして、ふと思い出した。自分よりもその友人の方が、晴人に強い憧れを抱いているということを。
「失敗した…」
ボソリと洩らす智人を不思議そうに見上げながら、千彩は膝の上でご機嫌にゴロゴロと喉元を撫でられ続けていた。

