Secret Lover's Night 【連載版】

「どないしたらええん?これ。俺、練習行かなあかんのやけど」
『起きんか?』
「知らん。帰って来いや」
『帰られへんからそっちに頼んでんのやろ。わかれや』
「ロリコンの事情なんかわかるか」

普段ならば、大好きな兄にこれほど食ってかかったりはしない。けれど、今日ばかりはそうもいかない。突然任されることになった「義姉(仮)」という名の幼女を持て余し、智人のイライラメーターは振りきれそうになっているのだ。

『悪いな、面倒かけて』
「思うんやったら帰って来てくれたらええやん」
『帰りたいのはやまやまなんやけど…俺、今北海道やねん』
「は?」
『女王様の撮影で、どうしても外されんでな。というわけやから、帰られへんのや』
「ふぅん」

女王様と言えば「MARI」様だな。と、以前晴人が撮って賞を貰ったというモデルを思い浮かべ、智人は大きなため息を吐いた。

「そっちと結婚すりゃええのに」
『は?あかん、あかん。女王様には恐ろしい従者が…って!痛いがな、メーシー!』
「誰やねん、メーシーって」
『あぁ、ごめん、ごめん。従者が反乱を…ったぁ!』
「何でもええけど、これどないしたらええか教えてや」

従者だか何だか知らないけれど、いちいち付き合っている暇は無い。と、再度千彩を揺すってみる。すると、うぅん…と一つ呻いた後に、重かった瞼がゆっくりと持ち上がった。

「おっ?千彩、お兄やぞ」
「おにー…」
「晴人や、晴人から電話」
「はるっ!はるー!代わって!代わって!」
「わかったから暴れんな!」

膝の上で寝起きとは思えないくらい暴れ始めた千彩を抑え、智人は遠ざけていた携帯を差し出した。

「もしもしっ!はるっ?」
『おぉ、ちぃか。ええ子してるか?』
「うん!」

「嘘つけっ!」

千彩の返事に、智人は思い切りの良いツッコミを入れる。けれど、それには反応せず、千彩はにこにこと笑いながらソファの上に正座した。