「何の用?邪魔なんだけど」
「ん?そっちこそ」
「アタシは晴を誘ってんの」
「ダメダメ。王子は大事な姫を迎えに行かなきゃなんねーんだから」
「姫?誰よそれ。新しい女?」
「さーね。気になるなら王子に聞けば?」
その言葉に、マリの細い腕が晴人の胸元へと伸びた。それを視線で追いながら、晴人は思う。この揺らめくような感覚が気持ち悪い、と。
今まで、女に触れられて気持ち悪いと思ったことなどなかった。どんなに好みから外れた女でも、それなりに受け入れてきたはずなのに。
それがどうだろう。一番気に入って抱いていたはずの女を、気持ち悪いと思うなんて。
そっと手を退け、一歩下がる。そして、訝しげに見つめるマリの視線を避けるように、置きっぱなしだったカメラを手に取った。
「晴?どうしたの?」
「ごめん、マリ。俺もう無理やわ」
手早くカメラを片付け、一呼吸置く。そして、改めてマリに向き合った。
「俺、好きな女がおるんや」
「は?」
「他の女なんか目に入らんくらい惚れてる」
「なっ…えぇっ?嘘でしょ?」
驚くマリの大きな目は、こぼれ落ちんばかりに見開かれていて。それを見てとうとう笑い出したメーシーが、晴人の肩をポンッと叩いた。
「顔真っ赤だよ?王子」
「いやぁ…なぁ?」
「あの王子がねー。変われば変わるもんだ」
「喧しいわ」
頬を抓もうとするメーシーの手を払い落とし、赤くなった顔を隠すように俯いてガシガシと頭を掻く。こんな純情、中学生の時以来だ。そう思うと、余計に照れくさくて。
「あー!もう!行こうや、メーシー」
「照れちゃってー。姫にもそれ言ってやんなよ?絶対喜ぶって」
「ええから!ほら!」
「はいはい。じゃーね、麻理子」
「えっ、あっ…ちょっと晴!」
名を呼ばれて我に返ったマリが、去って行こうとする晴人の腕を慌てて掴む。
「晴っ」
「マリ、だから…」
「ホントだったの?噂」
「噂?」
「結婚…したの?姫って、好きな女ってその相手のこと?」
「いや、それは…」
「そうそう。だからもう皆の王子じゃない。モデル仲間にもそう教えたげるといいよ」
「ちょっ…メーシー!」
「いーじゃん。どうせ隠しててもそのうちバレるって」
「いやっ、そうやなくて!」
「はいはーい。愛しい姫を迎えに行こうねー。じゃーねー、麻理子」
強引に腕を引かれ、よろけながらスタジオを後にする。置き去りにされたマリは、ただただポカンと呆けていた。
「メーシー!」
「ん?」
デスクにカメラを置き、ご機嫌に鼻歌でも歌い出しそうなメーシーを呼び止める。にっこりと微笑まれ、叱り付けようとしていた晴人は少し怯んだ。
「ん?そっちこそ」
「アタシは晴を誘ってんの」
「ダメダメ。王子は大事な姫を迎えに行かなきゃなんねーんだから」
「姫?誰よそれ。新しい女?」
「さーね。気になるなら王子に聞けば?」
その言葉に、マリの細い腕が晴人の胸元へと伸びた。それを視線で追いながら、晴人は思う。この揺らめくような感覚が気持ち悪い、と。
今まで、女に触れられて気持ち悪いと思ったことなどなかった。どんなに好みから外れた女でも、それなりに受け入れてきたはずなのに。
それがどうだろう。一番気に入って抱いていたはずの女を、気持ち悪いと思うなんて。
そっと手を退け、一歩下がる。そして、訝しげに見つめるマリの視線を避けるように、置きっぱなしだったカメラを手に取った。
「晴?どうしたの?」
「ごめん、マリ。俺もう無理やわ」
手早くカメラを片付け、一呼吸置く。そして、改めてマリに向き合った。
「俺、好きな女がおるんや」
「は?」
「他の女なんか目に入らんくらい惚れてる」
「なっ…えぇっ?嘘でしょ?」
驚くマリの大きな目は、こぼれ落ちんばかりに見開かれていて。それを見てとうとう笑い出したメーシーが、晴人の肩をポンッと叩いた。
「顔真っ赤だよ?王子」
「いやぁ…なぁ?」
「あの王子がねー。変われば変わるもんだ」
「喧しいわ」
頬を抓もうとするメーシーの手を払い落とし、赤くなった顔を隠すように俯いてガシガシと頭を掻く。こんな純情、中学生の時以来だ。そう思うと、余計に照れくさくて。
「あー!もう!行こうや、メーシー」
「照れちゃってー。姫にもそれ言ってやんなよ?絶対喜ぶって」
「ええから!ほら!」
「はいはい。じゃーね、麻理子」
「えっ、あっ…ちょっと晴!」
名を呼ばれて我に返ったマリが、去って行こうとする晴人の腕を慌てて掴む。
「晴っ」
「マリ、だから…」
「ホントだったの?噂」
「噂?」
「結婚…したの?姫って、好きな女ってその相手のこと?」
「いや、それは…」
「そうそう。だからもう皆の王子じゃない。モデル仲間にもそう教えたげるといいよ」
「ちょっ…メーシー!」
「いーじゃん。どうせ隠しててもそのうちバレるって」
「いやっ、そうやなくて!」
「はいはーい。愛しい姫を迎えに行こうねー。じゃーねー、麻理子」
強引に腕を引かれ、よろけながらスタジオを後にする。置き去りにされたマリは、ただただポカンと呆けていた。
「メーシー!」
「ん?」
デスクにカメラを置き、ご機嫌に鼻歌でも歌い出しそうなメーシーを呼び止める。にっこりと微笑まれ、叱り付けようとしていた晴人は少し怯んだ。

