キィ、キィ。ブランコが鈍く音を立てている。
あのころといま、何かがまるで違うことはわかる。でも、何がそこまで違うのか、具体的で鮮明な答えはどうしてか浮かんでこない。
あのころ僕が見てた世界。見ることのできた世界。世の中の摂理や不条理のことなんて何も考えない、考えなくてよかったとき。明日なにをして遊ぶかを考えることはあっても、昨日なにをして遊んだかなど、考えたこともなかった夜。ブランコの鎖を掴むと手が汚れることも、僕は今日になって初めて知った気がする。
目の前に広がる灰色の暗闇。今の僕は、ここにいる。目の前の景色すらろくに見ることのできない霧の中に。かつての青空と開けた視界は、今や記憶の中だけだ。
淡い赤茶色に汚れた手のひらを見つめて、僕はこの公園に来た原因を思い浮かべた。憤りと悲痛の表情を浮かべた、両親。思い出すだけで胸が詰まりそうになる。失望。そうだ、両親の瞳には、薄く、しかし確実に、失望の色が混じっていた。それは、初めて見る色だった。
子供のころと比べてもいまさらどうしようも無いことはわかっている。それでも、あのころの僕は両親にそんな顔をさせたことは一度だってなかったと、そんなことを考えてしまう。危険な遊びをして憤怒の形相で叱られたときも、こんなに惨めな気持ちにはならなかった。
いつまでも両親の顔色を思い返している自分がどうしようもなく馬鹿らしく思えて、僕は見つめていた手のひらをぎゅっと握ってから立ち上がった。自嘲的にため息を吐いた後、来た道の方へ一歩二歩、歩き出す。
そのときだった。



