タイミングがいいのか悪いのか、柏原が……保健室に入って来た。


こんな時に、来んなよ……。


「あ、心ちゃん、忘れ物! 慌ててた……からって? え? 何かあったの?」


変な雰囲気に気づいた柏原。

咄嗟に嘘をついた。


「あっ柏原、俺さ、体調悪くて……
美鶴……美鶴と病院寄って帰るから、心菜送って行ってくれる?」

「えぇ???あ……あぁ」

「わりーなっ!」


その場に居たくなくて……
その場の空気に負けそうで……

胸が……胸を刺す針が……でっかい釘みたいになってて。


無理矢理、美鶴を引っ張り保健室を出た。





「陽呂ー、まじでいいの?」

「俺は、大丈夫」


また呪文の様に繰り返す言葉。



でも、その言葉を言う度に……



胸の傷が……こんな消えそうな薄い傷が痛む。

うずうずと痛むんだ。



心菜と同じところに傷があるから。

だから……痛い気がするだけ。



きっと、そうなんだ……。