「心ちゃん……苦じぃー」

「あ、ごめんごめん」


愛未の口にあてっぱなしの手を離した。


「もぅ……ちょっと言った位で、真っ赤になりすぎだよ!」


うぅ…。

私の両頬に小さな手を下からあて、にっこり『可愛いー』って笑う。


「そんな顔に出てるのに……なんで気づかないかな? 陽呂君」


にっこり笑う愛未に、フッと哀しく微笑んだ。



気づく訳ないよ。



陽呂は、私を女として見てないんだもん。


親の関係がなければ……私なんて相手にもしてくれないし。



だから、こんなちっぽけな傷に頼ってるの。

制服の上から、そっと傷跡を触った瞬間、背後から聞こえた声。





「ねぇ~、陽呂ー江田さんと婚約したって本当~?」

「あぁ? 本当だけどー?」


あ……陽呂。

とても冷たい表情に冷たい声で相手の目も見ないで話す陽呂。


その横にはケバイって言葉がピッタリな女の子が居た。


てか、何ちゅー猫みたぃな声出す女なのよ?!


《凄い……あれ密着しすぎだよね?》


歩いて来た2人から隠れる様に柱の影に入り、しゃがみ込んで小声で喋った。


確かに……密着しすぎっ!


「なんでぇー? 好きなの? 江田さんの事???」


な……何ちゅう質問???
そんな事、聞かないでよっ!



立ち上がろうとした私を引っ張り戻した愛未。

どこに……そんな力が?!


《面白いじゃない、なんて答えるのかな?》


おいおい……。
楽しむんじゃないわよ。


キラキラ輝く楽しそうな笑顔。

こんな愛未は、誰にも止められない。


ま……私も聞いては、みたいけどね?