もう面白い事は、なさそうだな。って顔した美鶴が、またムカツク。


「本当に、陽呂って鈍いよね?」

「……」


何も言えねーし。

確かに……鈍いのかも。
こんだけ一緒に居て、気付かねーなんて。


「姉ちゃんも、相当意地っぱりだけどさ?」

「心菜が?」

「うん。姉ちゃん、陽呂がそばに居てくれるのは、怪我のせいだと思ってるよ?」


怪我って……この傷?


心菜の事を考えると、ウズウズと痛み出す傷。

同じ場所にある傷。

俺のせいで出来た……傷。


「だから、陽呂? ちゃんと気持ち言ってあげてよ」

「え?」

「姉ちゃん、あんだけ賢くても結構、恋愛に関してはバカだからさ?」


恋愛バカ?


「陽呂が、ちゃんと言わない限り、絶対気づかないよ、陽呂の気持ちなんて」


美鶴が俺の胸の傷を指した。


「姉ちゃんには、幸せになって貰いたいんだ」


少し親心にも似た美鶴のセリフ。


それは、同じだよ……美鶴。

今まで……ガキの頃から、ずっとそばで見てたんだ。



親が出張ばっかで寂しかった時も。

雷が怖くて、お前等が泣いてた時も。

飼ってた犬が死んだ時も。

お嬢様だから……って怒られてる時も。

怪我……さした時も。