抜け出した先は、昨日の体育祭の物が、押し込まれてた狭くなった体育館。


「今日は、誰も来ませんからね」


その辺に落ちてたバスケットボールを拾い、ゴールに掘り込んだ。

その姿を見ながら聞いてみた。


「ねー陽呂? 何で、抜け出したの?」


少し離れた場所から、こっちを真っ直ぐに見つめる。
ボールを脇に抱え、近付いて来た。


「何ですか?」


聞こえてなかったんかい!

んな真顔だから、何言うんだろ? って焦ったじゃないっ!


「ホスト疲れてたの?」

「へ? 別に?」

「じゃあ……何で抜けたの?」


少し赤くなった陽呂は、私を下から見て目が合ったところで留まり、


「心菜さんの格好……それ以上、見せれないからですよ」


って?

えぇ?


私の事?




また、バスケットゴールの方へ向かう背中を見て、追いかけなきゃって思った。


何故思ったのかなんて、わからない。

ただ……今、追いかけなきゃ、このまま置いていかれるんじゃないかって。



そう思っただけ。

陽呂が、遠くへ行っちゃうんじゃないかって。





気づいたら、赤いシャツを掴んでた。



驚いた陽呂は、顔だけこちら側に向けて


「またーそんな格好なんで、ジャケット着て座ってて下さい」


って少し赤い顔で微笑んだ。