私は掌に置かれたそれを、じっと見つめた。




「土産だ。」



それは…、


ユニフォーム型のキーホルダー。



しかも……



「何で私の好きな選手知ってるの?!」



私の好きな選手の背番号に名前……。



「結がお前の話ばっかするから…。大体巨人のファンのくせに、好きな選手はヤクルトって…、面白いな。」



「………。」



「…それ…、やるよ。お前がその選手が好きだって知ってたら…、無理矢理連れてったのにな。」




「……ありがとう。あははっ…、ヤダ、結構嬉しいかも。」



「…なら…、笑っとけ。」



「………。」



「…そうやって笑え。」



「………うん。」



「声が小さい。」



「……ハイ!!」



「…よし、じゃあ…、戻りますか。」



「…あ。ちょっと待って。」



「…あ?」



「…噂……、ややこしいことになるから、中道先に行ってよ。」



「…それはそれでいいんじゃん?言いたい奴には言わせとけー。」



「…違くて!結に……誤解される。」



「…それはつまり、里中も同じ訳だもんな。」



馬鹿中道……。



それこそが、誤解なんだよ。


わたしと里中くんは……



「じゃあ、お前が先に行けっ。」



「…え。」



「お前の背中見守るのは…今の俺の特権だ。」



「………。」



「…あの席、結構いいだろ?」



「……うん。」



「俺の席も結構いいぞ。誰かさんの無防備な後ろ姿が見れて。」



「馬鹿っ、変態!」



「…ははっ…。…なあ、だから…心配すんなよ。変な噂がたったら一掃してやっから。」



「……うん。」



「…あと、後でちゃんと俺にも煎餅くれ。いつも通りにいこーや。」



「……うん!じゃあ…、お先にっ。」




私は踵を返して……



中道と別れた。




君はいつも近くにいて……


いつも、遠くに感じる。



私たちのこの距離は……



きっと、変わらない。


ずっとずっと……


変わらない。