「…ぎゃ~っ、待って、ごめんて。いや、ゴメンナサイっ!」



私は叫ぶ中道の口を必死に塞いだ。




「………。上原。」



「…ん?」



中道は私の腕を掴むと…、急に真剣な顔つきになった。




「……ブラ、見えてる。」



「…………。」



よく見ると……



ブラウスがいつもよりもはだけていて……



上から覗けば、確かに見えそうなくらいギリギリライン。





「……ギャ~っ!」



私は再び叫ぶと……



慌てて胸元を隠した。



「…バカ、変態っ!」



「お前、俺は教えただけだろ。知らない奴にジロジロ見られる前で良かったじゃん。」



顔色ひとつ変えない中道に…


私はますます腹がたった。



「…でも、あんたに見られたっ。」



「…そんな色気ねー胸、見たうちにはいんな……」



バチンっ!



「…最低っ。」


気づくと私は……



中道の頬を思い切り叩いていた。



「……。悪かったな。」



中道は目も合わせず背中を向けると……



『3組』の教室にひょこっと顔を出した。



ちょっと……



何する気?!




「…里中ーっ!ちょいこっち来て。」




「…………!」



待って、心の準備……。



私がアタフタしてると……



中道は、私の腕をガッチリと掴んだ。




「…なに?」



しばらくして、里中くんが顔を出した。



…ヤバい、どうしよう……。



「……エーゴ貸して。さっき終わったばっかだろ。あと…、ノートも。」



……アレ?



「またかよ。たまには自分でやって来い。」



そう言いながら……


里中くんは、一度教室に戻って英語の教科書やらノートを持ち出した。



チラチラと、こっちの様子を伺いながら……。



「サンキュ。」



里中くんからそれを受け取った中道は……


ニコリと笑った。



うわあ…、
悪魔の『天使の微笑み』。



うかつにも、それに見入ってしまうと……




「里中。コイツ、お前に話あるって。」




ポン…と…



私の背中を押した。



「……結ちゃん。」



違うって……
私は……



「コイツは、『柚』。上原柚だ。」



何故か代返する中道。




「え。『柚』?だってこのまえお前、『結』だって……。」