As Time Goes By ~僕等のかえりみち~













長い話の後……。



良輔はふう、と息をついて。



それから……




夕焼け空に流れゆく雲を、ぼんやりと見つめた。







「……ちょっと待って!今の話だと……、中道くんの打球が当たって怪我したんだよね。それを…ずっと恨んで?」




さすがに不可抗力なことだ。



多少の非はあるけど…


運が悪かっただけじゃ…。




「…まあそれもちょっとは頭に来たけど……、問題は、その後。」




「………?」




「あっさり野球をやめて、兄貴は呆れるし…不慮の事故と言えど、中道は一度も俺に謝らなかった。」




「………え。」




「………単なる…逆恨みだよ。野球も上手くて、兄貴は甲子園のヒーローで、好きな女の心をいとも簡単に奪っていく。だから…きっとムカついて、羨ましくて、つい…姑息な真似をして、好きな子を傷つけたりもした。全ては奴が悪いからだと罪をなすりつけて。」



「……………。」




「その度に…、奴は守りに来た。正義を気取って、逃げもせずに……。人に謝りもできない奴が何でそこまでって思った。でもさ……、全部俺の思い違いだったんだよ。」



「……え?」




「…本当は、中道…、何度も家に謝りに来たんだって。その度に、兄貴やら両親が謝る必要ないって門前払いしてたらしい。だって実際奴の口車に乗って俺があんな球投げなきゃ良かった話だからね。つまりは…、誰も…悪くないんだ。中道はさ、誠心誠意を持って…上原を守ろうとした。」






「…………。そうだね…、誰も悪くなんて…ない。」



「まあでも、この事実を兄貴に聞かされたのは中道がいなくなってからのことだし……、結局俺も謝れずじまい。今だから言える…昔話だな。」




「……うん。でも…、謝る必要なかったんじゃん?」



「え?」



「お互い様ってことで…。多分中道くんも気にしてないと思う。そんな器の小さい人じゃないじゃん?それになんせ今や……、長年の恋を叶えたばっかだしね。」




「…………。」




そうだよ、



もうとっくに……時効だよ。




アンタの方こそ……、ずっとそれに囚われて。

身動きできなくなっていたんじゃないの…?