私の髪は、結の作品だ。



「…器用だよなあ…。」




休み時間、トイレの鏡で自分を見つめながら…


つい、ぼやいた。



「……ッしゃーっ。行くぞっ。」



その場にいた女子生徒が驚く程の気合いの掛け声と共に…



私は、トイレから飛び出した。





うろうろ……



うろうろ……





【3組】と書かれた教室の前を右往左往…。




よく考えたら男子を呼び出すのは初めてで…



まるで、告白する女の子の心情だ。



しばらくそんなことを繰り返していると……





「あれ?上原?」




背後から、ポンっと肩を叩かれた。




「……げっ。中道…。」



振り返ったすぐそこにいたのは同じクラスの『中道侑』で…



くしくも同じ名前のその男が、私は大の苦手だった。



「…『げ』って…、お前ここで何してんの?」



「なにって…そっちこそ。」



一歩、後退りする。



「…俺は里中に用あって……。」



「……!」



「お。…お前も?」



「いや、…いやいや、違うし!」



「…顔に書いてあるぞ。『そうです』って。」



「…んな馬鹿な!」



思わず顔を覆う。



「…わかりやす~。てかお前この前里中から告られてたろ。」



「な…、なんでそれを!」



「だって見てたから。」



「…げ。」



正確には……


結に告ったハズなんだけど。



「…で?振ったのにやっぱり思い直した?」



「はあ?違う違うっ。弁解しに来ただけ。」



「…弁解…。」



「…だってさ、里中くん『結』に告ったつもりだったから…。」



「……。あ、じゃあ何?お前それ知ってて振ったの?本人の意思も聞かないで…?」



…ああ、神様…。


どうしてこの人に聞かれてしまったのでしょう。



ズバっと人の心を読み解くこの人は……


私の最も苦手とするタイプだというのに……。



「……うっさい。関係ないじゃん。」



ついつい、悪態をついてしまった。




「………。お~い、コイツ、上原柚は今から里中に………」



……。



おいおい…!