中道と別れて家に帰ると……




一気に現実にひき戻された。




「…遅かったね。」



そう言ってニコリともしない結を見て……



後悔ばかりが押し寄せる。



何も言わずとも、結の無言の訴えは……



痛い程伝わってくる。





「……ただいま。明日私ご飯作るから。じゃあ…、おやすみ。」




部屋に逃げ込み、


何度も深呼吸する。





「…………。」



そして……



机に置いてある『ある物』を手に取ると……




結の部屋のドアをノックした。



…返事はない。



「ゆいー…、入るよ~。」



そっと……

ドアを開ける。





結は開かれた窓の外を……




ぼうっと眺めていた。





「…綺麗な星……。」



結がポツリと呟く。



「………。」



結は……


私とは違う。



この空を……


この、綺麗な星のはかなさを……



知っている。




「……ホントだね。」



結の隣りに並んで見上げたその空は……



さっき中道と見た空と同じ。


なのに…妙にもの淋しく感じた。




「……結、これ……。」



私は【ソレ】を握る指先にぎゅっと力を込めた。



「……?何これ。」



表情ひとつ変えずに、結はソレを手に取る。



「………。野球の観戦チケット?何?柚行くの?」


小首を傾げ、そこでようやく……



私を真っ直ぐに見た。



「…ううん。日付見て。私は…行けない。」



「……6月×日…?あ、東北大会の日?」


「うん、そう。」



「…行けないなら…、何で買ったの。」



結の『ごもっとも』な指摘に…


私は答えることができない。


それでも……



「…だから、結行かない?これあげるからさ。…ホラ、最近野球好きでしょう?」


「……。あんまりプロ野球には興味ないけどね。」



「……興味もってよ。」



「…何で?」



「【好きな人】の好きなものなんだから……。」



こうするしかないと知っていた。



裏切る訳にはいかないでしょう。



傷つけたくなんてないでしょう?



だから……



「貰ったの。…中道に。」



「………。」



結局はこうするしかなかった。



「…だから…、行ってきて、結。」