思わず硬直する私をよそに、奴はなにやらガサゴソ鞄の中を漁っている。
「……ホレッ。」
私のアタマに……
タオルが被さる。
「…言っておくけど未使用だからな。今日リトル行かなかったから汗かいてねーし。」
「……ありがとう。じゃあ、遠慮なくお借りします。」
タオルを被ると……
ほのかに中道の匂いがした。
「…ぶっ……。農家のおばーちゃんみてー。」
中道が吹き出す。
「……なんとでも言って。」
色気もないって言いたいんでしょう?
わかってるよ。
「うそ。ジョーダン、…かわいい。」
突然、そんなこと言うから……
顔が一気に熱くなった。
…良かった、今が夜で……。
中道にこんな顔、見られたら…。
チラッと横目で……
奴を見た。
中道は自分の髪をクシャっと乱して……
そっぽを向いた。
「…中道。あんたももしや照れてる?」
「……うるさい。言うんじゃなかった。」
中道………
あんたは今、どんな顔してる?
静かな夜の、秘密の時間。
二人の夜は……
ちょっとだけこそばゆい、
不思議な夜だった……。
月明かりの下を、無言で歩く帰り道。
私は中道の一歩後ろを歩く。
時々奴は振り向いて……
私の姿を確認する。
そしてまた……
一歩前を歩いていく。
「…変なの。」
思わず……
呟く。
だって追いついて離れて……
なのに一緒にいるって変じゃない?
「……お前がストーカーしてるからだろ。」
呆れた顔して……
中道は足を止めた。
「……そっか。」
私は奴の隣りに並ぶ。
二人並んだ帰り道……。
それはそれでおかしくて……
「やっぱり…変なの。」
そしてちょっと嬉しかった。