やって来たのは……、私の母校。
「おー、やってるやってる!」
私はグラウンドを訪れると…、
「先生、お久しぶりです!」
「あ?上原?!」
陸上部の顧問に…挨拶を交わす。
「…お前、全く音沙汰もないで……。今何してんだ?」
「東京で美容師。でも、まだアシスタントです。」
「似合わねーな。ったくそんな格好しやがって…。たまにゃOG会に顔だせよ?」
「考えておきまーす。」
先生は…、心なしか、嬉しそうだった。
恐面の顔が……くしゃっと歪んでいる。
「ここに来たってことは…よほど暇なんだろうな?」
「え。……いえ、予定は詰まってますが…。」
「嘘こけ。…しかし…まるまる太ってんじゃねーか!…、お前、走るの辞めたのか?」
「休日にジョギングするくらいです。代々木公園とかで…。」
「……。都会人ぶりやがって。…思い切り走ってみたらどうだ?持て余してるんだろ、どーせ。」
「……。今全力で走ったら…肉離れでも起こしそうです。」
「……お前が言うと、シャレにならん。」
「あはは。そっか。」
「……ちょい待って。せっかくだから後輩を指導してけよ。」
「…私で務まりますか?」
「頂点に立った奴しか…知らない世界があるだろ。一つでもいいから、教えてやれ。」
「……ハイ。」


