As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「…大体お前…、最近教室でも暗いし、部活でも変だし、下ばっか見やがって。勿体ねーことしてんぞ。」



「………。」



「…東京ではネオンが眩しくて…、見上げようとは思わなかった。でも…、ここは違う。お前は…馬鹿だ。」



「…………。」




なる程………。



確かにこんな綺麗な夜を知らないなんて……



勿体ないかもしれない。



…って、



案外こいつ……



ロマンチスト?!



意外だ。
…意外過ぎる。




「…それに、アレだ。こんだけでっかい空から見れば俺らはホントちっぽけで……、夢や希望なんて抱いても、大したもんじゃないって思える。だから…、たった16年そこそこのある一ヶ月なんてほんの一瞬の話で…、流れ星みたいなもんだろ。だから……」




「中道…、あんた……」



中道は、顔を空に向けたまま…


こっちを見ない。





「あんた、私を励まそうとしてるの?」



「………。」



そこでようやく……



こっちを向いた。



「…そーいうんじゃ…ねーよ。」



フイッと逸らされた視線が、奴の不器用さを物語っていた。




「…へんなのー。」



何だか笑えてきた。




走れないことも、


結のことでモヤモヤしていたこの気持ちも、


確かに今ここで……


この見上げた星空の壮大さと比べれば、アホらしいくらいにちっぽけだと感じる。




でもそれは……



隣りに、アンタがいたから。



私を導いてくれたから。




……違うかな…?




「……っくしょんっ。」



「……意外と寒いもんな。風邪ひく前に帰ろうぜ。」




「…もう帰るの?」



思わず……


立ち上がる奴のブレザーを掴んだ。



「…風邪ひくぞ。」



「大丈夫っ。」



何をそんなに頑なになっているんだろう。



でも…



なんとなくまだ、ここにいたかった。



この星空の下、どこか幻想的で……
現実逃避しているかのような……
夢の世界。



夢の中ならば……



中道と一緒にいたって許されるんじゃないだろうか。


…そんなことを…、



不覚にも考えていた。



「………じゃあ、あと5分。」



ストンと座ったその距離は……



腕と腕がぶつかるくらい。




「………。」



近い!
近すぎる……。