中道はベンチに腰かけると……
私に手招きした。
「………?」
言われるがまま、隣りに腰を下ろす。
人一人分、距離をあけて。
「「……………。」」
しばらく……
沈黙が続いた。
「…ねえ、中道。」
「…ん~?」
「こういうの、不法侵入って言うんじゃないの?」
「…馬鹿だなあ、まだ帰ってなかったってことにすりゃ済む話じゃん。」
「………まあね。」
アンタは制服だしね。
「…お前さ……」
「え?」
「…いっつもここでつまんなそうな顔してる。」
「…………。」
「…走りたいのに走れない。ストレス溜まるのは仕方ねー話だよな。」
「…………私、つまらなそうだった?てか、いつの間に見てたの?」
「…いつもだよ。」
「………。」
いつも…?
「…ボーっと練習見てたり…、全然違う方見てる。そうだな…、野球部とか。」
それは……
アンタの視線の先がいつもそこにあるからで……
って、
え……?
「そんなに野球が好きか?それとも……、そこに誰かがいるとか?」
ドキッと……
心臓が音を立てた。
「関係ないじゃん、中道には。」
「………。」
「…大体さ、何でここに来たの?」
「…それは……。」
「…『それは』…?」
「…上。」
「…?うえ?」
中道が指さすその頭上高くに……
満天の星空。
「…うおっ!……すっごい。」
思わず……
釘付けになる。
「…上原。口開いてる。」
………。
余計なことばっか気づいて。
でも……
言われなければ、こんなすごい星空にさえ……
気づくことはできなかった。
「…すげーだろ。」
「…うん!」
「…周りに高い建物も何もない。だからここが…一番綺麗に見える。」
「………。」


