「9時……。」
今から外って…
マズくない?
…とはいえ、もう、すぐ近くに来てるみたいだし…
「…仕方ない。行くか。」
私は階段を駆け降り……
リビングへと走る。
「ちょっとトレーニングがてら散歩してくる!」
顔も見せずに声だけかける。
だって結に勘づかれる訳にはいかないから。
「…今から?もう遅いし、朝にしたら?」
母の声に……
「…今じゃないとダメ!折角やる気になったから…、行かせて。」
それだけ言って、立ち去ろうとすると……
「……柚!」
…結の声。
「……何…?」
結が襖から顔を覗かせた。
気まずくて、私は振り返れない。
「…頑張れ。」
「……ん。行ってきます。」
私は……
馬鹿な嘘をついた。
…ごめんね、結。
玄関を出ると、
意外に外は寒かった。
半乾きの髪に風が吹くたびに……
私はより身を縮ませる。
しばらくすると……
「……ホントに来たし。」
遠くに、中道の姿が見てとれた。
なんとなく小走りで、私は奴の元へと急いだ。
「…あれっ。中道制服?家帰ってないの?」
「…うん。そーゆーお前はどうした、そのアタマのチョンマゲ。」
「…放っておいて。家ではいつもこの格好。」
「…へぇ~…。髪おろしてるの初めて見た。」
中道はまじまじと私を見た。
「…なんか文句ある?」
「…いーや、なんか女っぽい感じ。」
……この格好が?
めちゃめちゃ部屋着で髪も洗いざらしだけど……。
「…うん。女の無防備な姿はそそられるな。」
「…バカっ、変態っ。」
「……うん、そーかも。」
中道はあっさり認めてしまうから……
私は何だか拍子抜けしてしまった。
私を連れ出した理由も、どこへ行くのかも聞かされないまま……
私たちは、ある場所へとやって来た。
「…何で?」
着いた場所で、疑問をぶつける。
なぜならそれはそうだろう。
辿り着いたそこは……
つい数時間前までいた場所。
「まあ、座れば?」
そう…、
学校のグランド。


