「う~ん。部活帰りに声掛けてみたら案外フツーってか、気さくっていうか…。なんか普通に話せるようになっちゃった。」
「へぇ~、さえちんらしいね。納得!」
紗枝は友達が多い。
サバけていて、人に話を合わせるのがウマい。
だからつい…、
みんな仲良くなって話すんだよなあ…。
「…てか…、里中くんも東京の人だったんだ?」
「ううん、小学校低学年まで中道くんがこっちに住んでたらしいよ。一年生の時に同じリトルに入団したって。」
「…………。」
なら……
元チームメイト?
ならば今二人は一体どんな気持ちで……
お互いを見てるんだろう。
「…そうなんだ……。」
なんだか、複雑……。
「あんたが悩んでもしょーがないっしょ。」
「…誰が、あんな奴の為に…」
「あら、あんな奴って誰のことカナ~?」
「………何でもない。」
…しまった……。
「…まあまあ恋は盲目って言うしね。妨げにならん程度に頑張りな。」
さえちん…、
恋ってナニよ。
「…妨げになってたまるものか!」
私は勢いよく立ち上がった。
「……いて…。」
大失敗……。
負荷をかけては駄目だった。
「妨げに…なってるよなあ……。」
紗枝は呆れたかのように、ため息ついた。
「…まあ出れなくなった分、周りを見る余裕ができたってことかな?」
「……?『出れない』?何が?」
「何がって…、東北大会でしょうよ。」
「………あっ…!」
自分出れないと分かった瞬間から……
忘れかけていた。
「…ねえ、さえちん。」
「…ん~?」
「いつだっけ、…大会。」
「………。マジボケ?6月××日から。あんた応援行くんじゃないの?」
「…………。」
私は慌てて鞄の中を漁ると……
あるモノを、取り出した。
「……しまった!」


