私が昼食のチャーハンを食べようとしたまさにその時に……


結は家に帰ってきた。




「お帰り。随分早い帰りだったね。…お昼は?」



「まだ~!」



「…チャーハンならあるよ。」



「…やった♪いただき~っ。」



私とは対照的に……



声が弾んでいる結。



「…結。今日…ってか、最近…どこに出掛けてるの?」


チャーハンをよそう結の手が…


ピタリと止まった。



「……柚。」


「…ん?」


「…気になる?」



その視線は余りにも真っ直ぐで……


逸らすことも許されない。




「気になるよぉ、そりゃ。だって結が教えてくれないなんてこと……なかったじゃん。」



「………。」



「…言いたくないことだってあるよね、そりゃ。」



「……教えよっか?」



「……え?」



「教えてあげる♪でも…柚だけにね。律とかには言わないで。」



「う、うん……。」



「あのサ…、隠してた訳じゃないよ…?ただ…、柚があまりにも近い所にいるから言えなかっただけ。」




「…『近い』…?何が…?」




心臓が…


とかとかと鳴っていた。






「最近ね、野球見に行ってるの。」



「………。」



「あ。野球って言っても…、少年野球ね。」



「ふ、ふーん…。あれ?結って野球に興味あったっけ?」



次に出てくる言葉が怖い。



なのに……



聞かずにはいられなかった。




「…ん。最近ちょっと好きになって。」




『好き』のフレーズに…



ドクンッと激しい胸の痛み。




「なんと!中道くんが指導してるの。」





ナカミチ………。




「偶然見つけてさあ…、毎日ではないけど、練習に顔出してるみたい。あれだよねー、中道くんて。苦労人でさあ……。今おばあちゃんと二人暮らしなんだよね。」




「……え……?」



「……知らなかった?」



「………知らない。」




そんなの……



知らないよ。




「そっか…。なんでも、東京には帰りたくないって。お母さんも…いないんだって。亡くしたらしいよ。なのに…全然そんなそぶり見せないし、男らしいよね~…。」




「…そう?ただ…何も考えてないだけだと思うけど……。」