すると……、

ショートの目の前で、ワンバウンド。



その球は…少年のグローブにすっぽりおさまった。


彼は急いで立ち上がると……



下からひょいっとセカンドに投げる。



ランナー、アウト。


そこから間髪置かずに……


ファーストへと送球。



バッターは……?




塁審を見ると、右手を高く突き上げている。




「アウト!」



「ゲームセット!」




少年達は…



歓喜の声をあげ、互いの頭を叩きあった。




そして………




「「ありがとうございましたッ!!」」


相手チームの健闘を讃えて挨拶を交わす。




ついつい……



私は拍手を送っていた。






子供達の姿を辿っていくと、ついに…



中道の姿を捉える。




「…笑ってる……。」



少年達のアタマを何度もなでて、子供のようにはしゃいでいる。



「…まあ、よかったじゃん。」



その姿から……


目が離せない。




やがて……



奴の視線がたまたまこちらに向いた。



「…げっ。」



…見つかった?



…が……、



すぐに視線が逸れる。



「…なーんだ…。」



つまんない。


てっきりまた、


「上原!」なんて…呼ばれるかと思った。




「…や、有り得ないっ!何考えてんの、私。」



自分の思考に……、ついていけない。




「…とにかく帰ろう!今すぐ帰ろう!」



これ以上の長居は無用!



そう思って去ろうとした時……




「結!」




…え。



『ゆい』…?



確かに……



あいつの声だった。



けれどあいつが呼ぶ名前は私ではなくて……。




私は……




怖くて振り返れなかった。


子供ばっかり見ていて……


周りは全然見てなかった。



結が……



そこにいるの?


それとも、同じ名前の別人……?





私はそのまま……



歩き出した。