「ど~れ、じゃあ…、行きますかぁ。」




ブレイクタイムは…早々に切り上げ。



グラウンドに集まる陸上部員を見つけて…、
気持ちが焦る。









「陸上部、燃えてんね。朝練もしてなかった?」




帰り支度をする私達に話し掛けて来たのは…、




里中佳明……。






「あー…、まあね。そっちこそ、毎日早朝から近隣の路上ゴミ拾いでしょ?頭上がらないよ。」



「そうなんだよね。今年から新しいコーチが入って…、身辺の整理やらボランティアとか、前より規律ある行動を重視するやり方ってゆーか……。」





そこまで言って、佳明は…大欠伸!




「…………おかげで…眠い!」







けれども、彼は毎日…生き生きしている。




佳明がかねてより待ち望んでいた、彼のシニア時代の後輩が入部して……、



まずは、春季東北地区高等学校野球大会を目指し、
それから…、夏の甲子園出場を目指して…本格始動。



今年こそは狙えると、今……野球部への期待は高まってきている。




ただ………。





『あいつがいないと張り合いねーなぁ…』


……なんて、この間…ぼやいていた。





『あいつ』と言うのは、


中道侑のことで……。





奴の話を…こうやってさり気なくできるようになったのも。



時間が……解決したのかもしれない。






「「目指せ、全国!」」



これが、今現在の…

私と佳明のスローガン。





私達の間には、もう何の蟠りもない。






奴がいなくなった時に、誰よりも私を気にかけてくれてくれたのは…、佳明だった。


もちろん、頼ろうだなんて微塵にも思ってなかった私は…、当時彼を遠ざけようとしたけれど。





今はクラスメイトとして……、ごく普通に、気兼なく話せる相手である。