……が、



「…守、智之、お前ら身体がボールを避けてるぞ。ちゃんとボール見てるか?」



聞き覚えのある声に、つい足を止めて……



少年達の輪の中を見つめる。




「……は?」



そこには……



腕組みをし、偉そうに踏ん反り返る…


中道の姿。




「ハイッ!すみませんでした!」



…おお…、何て偉そうなの。




「…とにかく、身体全部で受け止めるような気持ちで…真心で捕らえなきゃボールは抜けていくぞ。相手にそこが穴だと思われる。上手い奴なら狙って打ってくるから…、もっとしっかり守れ!」



「…ハイッ!」



「…じゃ~今日はここまでな。…監督っ、お先に失礼します!」




「ありがとうございましたーッ!」



「おう。じゃーな。」




ベンチに置かれた鞄と制服のブレザーを持つと…




中道はフェンスの出口に手をかけた。





「…やばっ。」



こっちに来る!



私は自然と身体を翻し……



早足で歩き始めた。




「…上原っ!」



「……!」



恐る恐る振り返る。



「やっぱり。『柚』の方かなって思ったらやっぱそうだったな。お前さ~、こんなトコで何油売ってんの?」



にかっと笑う中道。



わぁお…。
…爽やかぶってる。



「……アンタこそ。」



私はまともに顔を見れなくて……



目線を逸らした。




「…失礼だな。見てたら解るだろ。俺は地元のリトルチームのコーチしてたの。お前みたいなサボリじゃねーよ!」



…サボリ……。



「…ふん。あ、そ……。じゃーね。」




何だかいらついて……



私はヤツを置いて先を急いだ。




いいやつだなんて…


思いはじめていた私がバカだった!




脳裏にあの時の光景が蘇る。



泣きじゃくる私の頭を撫でる…


中道の姿。



「…あれは事故…、そう、事故だ。」



言い聞かせるようにブツブツと呟く。



「…オイ。…嘘だよ!お前が毎日部活に顔出してることくらい…、ちゃんと知ってるから。」



「…………。」



…知ってたんだ。



「…アンタってあまのじゃくだよね。」



仕方なく……


振り返る。




「ん?よく言われない。」



「………。」



「どっちかって言うと…、優しいって言われる。」