As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

佳明はそう言うと…、




二人の距離を、じわりじわりと詰めてくる。



私の頭の中で、警告がなって……



後退りをしながら、



逃げ出すタイミングを図る。





『怖い』というよりは……佳明が訴える『寂しい』のサインに…堪えられなかったから。



彼の瞳が…、私を捕らえる度に、


罪悪感に苛まれる。



何もかも、がんじがらめにして……




身動きできなくする。




それがわかっているからこそ……、




逃げ出したかった。




……が。





掴まれた肩を、振りほどこうとしたって。



男の人の力に敵うことはできない。




ましてや、壁に追いやられた私に逃げ場などなく……





両手の自由を奪われて。







強引に……


キスされる。







私の小さな抵抗は、やがて諦めへと変わる。





なぜなら……




さっきまでとは一変。




彼のその瞳の奥に、



怒りと……
憎悪の念が、見え隠れしていたから。





……怖かったのだ。







「……。なに……おとなしくキスなんてされてんの。」




佳明は。


蔑むような目で……


私を見る。




「…柚にとって、キスなんて簡単なもの?」



「…………。」



「……訳わかんねーな。なんで、逃げねーんだよ。」




「……これで……、佳明の気持ちが済むなら。私は……」




「…これだけで…、済むと思う?」




「…………!」




「…馬鹿だよ、柚は…。まだ俺は諦めないって言ってんのに……。」



「……私だって!……簡単に……諦めたくない。だから…、許してくれるまで、わかってもらえるまで…。」




「………。期待持たせるようなことするよなぁ。」



「…………。」




「……身体もガチガチ。」




「……どんなことがあっても…。もう、心だけは…、奪われない。」




手が……


カタカタと震える。