「………?何なんだよ、マジで……。」
中道は、苛立ちを隠せずにいたけれど……。
「なあ…、それは俺にとって、いい話か?」
静かに、一定のトーンを保ちながら……
私をじっと見つめた。
「私はあんたじゃないから…、それは、わからない。けど、一つだけ……言えることがある。」
いつか言える日が来る。
肝心な言葉は言えなくても……
今、伝えられることを……!
「…佳明に……別れようって言った。」
「…………え?」
中道は……
足を止めた。
「…今…、何て?」
「ついさっき…、あんたと会う前に、佳明と…会ってた。別れたいって…話をした。」
「……別れるって…。何で?あいつは、何て?」
「……別れないって言われたよ。だからまだ……、ちゃんとけじめはついてない。」
「……マジか……。」
「…私の気持ちを、佳明がわかってくれるまで…、軽率なことはしたくない。」
中道は一瞬だけ、天を仰ぐ。
「…………。上原…、一つだけ…、聞いてもいいか?」
「……何……?」
「お前があいつと別れる原因の中に……、俺の存在が、少しでも…関係してる?」
「……うん。」
「……なあ。…お前の気持ちは、今どこにある……?」
私は……
真っ直ぐに指をさす。
「………え?」
「………今、目の前に。手を伸ばせば……、届くくらいの距離に。」
中道は目を見開いて……
それから、
「……なら、奪ってもいいの?」
至って真面目に………呟いた。
「……言葉に囚われていたら…何もできないだろ?」
「………!」
「…お互いが別れようって言わなきゃ…、納得しなきゃ…別れじゃないって?」
「……私は…そう思ってる。勝手なことをした分、納得してもらうまでは……」
「………。お前らしいな。けど、俺はもう待てない。」
「……なら……、仕方ないね。」
「………あ?」
「………。仕方ない。」


