私の歩く、数歩後ろから……
中道が、ついて来る。
緊張が走って……
歩き方も忘れてしまうくらいに、ガチガチな私。
「…これって一緒に帰ってるうちに入るのか?」
中道が、不満げに問い掛けてくる。
私は前を向いたまま…。
「お~い、上原ぁー。」
「……何?」
「いつだっけかも、こんなことあったな。」
「…………。」
ああ……、
確かに、そうだったね。
あの時は……確か、
「……俺がこのグランドで…、小学生と戯れていた時だったな。」
ふと……そこに目を移すと、
そこは……
小学校のグラウンド。
「……戯れていたっていうより、踏ん反り返って偉そうだったじゃん?」
「は?すげぇ優しいコーチだったハズだけど?」
「ナイナイ。」
「……おっつ…。」
でも……
真剣だったね。
自分が諦めていた夢を、少年達に託すかのように……
夢中だった。
今の中道は……、
あの時の少年たちと、同じ瞳をしている。
小さな灯で……
自分の道を、照らす。
手探りで、
迷いながら……。
「……あの時さあ…、お前を見つけて、嬉しかったんだ。」
「…………へぇ…。」
「あ。お前信じてないだろー。」
「いえいえ、そんなことはないですよ。」
「バカヤロー、俺は結構マジだったんだぞ。」
「はいはい。」
「………コラ。上原柚ッ。」
「……なによ。」
「…ちっとはこっち向いて話せよ。」
「……やーだよ。」
「…相変わらず可愛い気ねーな。」
「……いいもん。」
私達がよく話すようになったのは。
お互い、言いたいことをズケズケと言えたから。
アンタと会って、
こうして馬鹿やっていた頃の方が……
まだ、自分らしかったのかもしれない。
今は……、
中道が放つ一字一句が……
少しだけ、怖い。
好きになった分だけ、
間違うことがないように……
言葉を選んでしまうから。
遠慮してしまうから。


