As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「…別れてねーよ。俺は、別れるつもりない。」




………え……?





「こんな近くに柚をつけ狙う男がいるってのに…、それを平気で野放しにしておける奴に、渡すワケにはいかねーんだよ!」




三井くんの胸倉を掴んで。



佳明が……、



右手を振り翳す。





「…………!」





咄嗟に……




二人の間に、割って入った私の頬に……



佳明の、硬い拳が……



命中した。







「…………柚っ!お前、なにやって……」




「……なにって…、もし、今ここで暴力なんてふるったら……、野球部の甲子園の夢が、なくなっちゃうでしょう?佳明の夢が、潰れちゃうよ!」




「…………!」




口の中が切れているのか、鉄のような血の味が……

広がっていく。




「……でも、こんな奴庇うこと……」




「……私は三井くんを庇ったんじゃない。こんな所で、私なんかのせいで、あなたに駄目になって欲しくない。」



「…………。」




「…こんな痛み、私が佳明にしてきたことを考えれば………全然大したことはないよ。…大したことじゃない。」



「……………。」




「…私のことは許さなくてもいい。最低な女だって……思われて、当然だから。佳明……。今まで積み上げてきたものを無駄にしないで。」



「………柚……。」



「……私は、確かに佳明を選んだ。強くて、迷いがない。そんなあなたが……大好きだった。」




「……過去形……?」




「……うん。自分勝手で、我が儘ばっかりで…ごめんなさい。けど、気づいたの。私は……、アイツじゃないと駄目なんだってことに。」



「…………。」




「……ムカついて、しょーもない奴だってわかってる。でも…、結局引き戻されてしまう。馬鹿で傲慢で、私とは喧嘩ばっかりだけど……、それでも。…側にいたいんだ。」






わかってもらえなくてもいい。



こんな私、認めてもらえなくてもいい。





ただ、





君の純粋な眼差しに、


もう嘘はつけないから………。