自分がいかに無力か……
思い知らされる。
「……心までは、奪えない。だから…怖くなんてない。」
私が今できること。
せめてもの精一杯の強がりで……
抵抗すること。
「…俺も、ただの優男じゃなくて……信用を踏みにじって……、ごめんね。」
三井くんの顔が近づいてくる。
……本当は、怖いけれど、
悔しいけれど……。
ギュッと拳を握りしめて……
ただただ、その瞬間を待った。
……が、
「……何やってんの?」
酷く、冷酷な声がして……
三井くんの、肩がピクリと動いた。
「……人の女に……何してるんだよ。」
そこにいたのは……
「……なんだ。里中か。…つまんないな。」
「……は?三井、お前…。」
「…言っておくけど…、了承済みだから。」
「………あ?」
佳明の顔つきが……
みるみるうちに、豹変していく。
「……残念だな、里中。」
「は?」
「こうやって、お前の知らない所で……上原さんは裏切り続けていたってこと。」
違う……。
そんなんじゃない。
「現に。お前が来てなかったらどうなってたろうね?」
「……違う…。佳明、違うよ…。」
「…今更それはないんじゃない?……都合良すぎるよ、上原さん。」
「…………!」
「…どーせ別れるんでしょ?今更、誤解されようが、嫌われようが…関係なくない?」
なぜ、
こんなことを……?
これは、佳明を裏切り続けていた、私への……
罰なのだろうか。
三井くんが言うことに、言い返せない自分がいる。
認めたくない。
でも………
何をもってすれば。
佳明は私を信じてくれるのかが……
わからない。
「……柚…。今の……、本当?」
佳明が投げかける言葉は、破棄のない、私をまるで蔑むような……
低い声。
「……話って……、このことなのか?」


