As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

今にして思えば……。




彼が野球部の練習を見つめるその視線の端っこに……



たまたま私の姿が映ってしまっただけだと思う。




深い意味など決してなくて、



私が……柚の双子の妹だという理由だけで……



気にかけた。







なのに……



人とはわからないものだ。




こんなちっぽけな出来事が……。





私の心を動かした。










そう……、




柚の周りにはいつも沢山の人がいて……、




彼女はそんな仲間達に、いつもいつも支えられている。




柚に『特別』なんて想いはなくて、



中道くんもその中の一人で……。




彼の、こんな些細な優しさにも……



きっと、気づかない。








私なら………。







私なら………




気づいてあげられるのに。









中道くんは……



何を言う訳でもなく、ただ黙って……



隣りに立っていた。




その瞳の中に、




陸上部の部員達が走る姿が……


映し出されていた。










この人は……



中道くんは、


きっと、柚が好き。












噂はあくまで噂であったんだろうけど……






現実は。









嘘のない、





真っ直ぐな……






君の瞳が物語っていた。