As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

一度気になると、徹底的に調べあげるのが性分で……




私は、ちょいちょい柚にカマをかけてみた。



「柚って好きな人いないの~?」




答えは……



NO。




「男子で仲いいのって誰?」




答えは……



該当者、ナシ。




柚に聞いたって堂々巡りであることは明確で……



百聞は一見に如かず。



律に用あるフリして……



柚の動向を探るべく、


彼女の教室へと向かう。





目に飛び込んできたのは……、



彼女の斜め前の席。




柚の方を向きながら……



何やら小突き合う二人の姿。




ふと……、



彼に初めて会った時のことを……



思い出す。




「…………。」




そう…、


あんな風にアタマを叩かれて…



私を柚だと勘違いした。





けれどあの時以来。






中道くんは……



私をちゃんと「結」だと認識している。




指ひとつ、触れることなんてなくて……、





彼にとって、柚は特別な存在なのではないかと……



思わずにはいられなかった。



二人が噂になるのも……



ああやって、いつも小競り合いしながらも……



一緒にいるから。










私は……



少しだけ嫉妬していた。




この時はまだ、中道くんに……。




一番近くにいたのは私だったのに。



そのポジションを……



奪われた気がしていたのだ。





この、小さな淋しさを紛らわす為の恋愛。



嘘に塗り固めた恋など続くことはなく……、




生まれて初めて、男の人に振られた。



しかも、こっぴどく。




くだらないプライドが……


私の感情を揺さぶって………




その日の帰り際。



思わず涙が……



溢れてきた。






「どうした?」






その時……




私に声を掛けてきたのは……。




中道くんだった。



ただの失恋。



大したことじゃあなかったはずなのに……



自分の存在に、真っ先に気づいてくれた彼の心配そうなその声が……




頭の中に、こだまして……



ますます涙腺が、緩んでしまった。