「いっぱいがんばったんだろ?もう、あまりに感動してさ…、ホラ。」
「……わっ。」
目に涙……!
溜まってる!!
「だめだあ、思い出すだけでこうなんの。切羽詰まった顔してたからさ…、いつも。」
「……見ててくれたんだ。」
「あたりまえ!でも…邪魔になりたくないし、いっつも声すらも掛けられなくてさ。ただひたむきになる姿を遠くから見ていたいっていう想いと、支えになりたいっていう想いで……うん、複雑だった。」
「………そっか……。」
「終わってから…柚すっげー笑顔でさ。やっと解放されたんだなあって。これでようやく……手が届く。」
目を潤ませたまま。
佳明は、私の手を握る。
「…お疲れ。これから結果発表だけど、俺ん中ではお前が一番だったし…、柚のクラスの合唱もすごかったと思う。だから……」
「力…、出し切ったもん。どんな結果であろうと悔いはない。」
「…体育会系丸出し。そういうとこ、好き。」
「……………!」
「……あ~……、タガ外れそうっ。」
佳明はそのまま……
私の肩に、頭を置いた。
「…よ、佳明…?みんな見てるよ?」
「いーじゃん、最近ご無沙汰だったし。」
「………。」
「…聞かれたよ、彼女と別れたのかって。しかも何人にも……」
「……え…。」
「…悔しかったな。全然そんなことないのに、そんなつもりもなかったのに……。」
「…佳明……。」
「何でピアノなんて引き受けたんだろうなんて……最低なこと思ってた。しかも指揮者はアイツだし。どんだけ独占欲強いんだろうって……。あ~あ、この時間さえも何だか惜しい。」
「…………。」
「…あっつーい。夏は終わったはずなのにねぇ。」
「「………!!」」
「学園祭で気持ちが盛り上がるのはわかるけど、校内でイチャつくなあ。」
「紗枝、やだなあ、イチャついてなんか……」
「ハイハイ、本人達だけよ、そう思うのは。……ホラ、もう休憩終了時間だよ。」
「…えっ、あ……、うん。」
佳明と二人、顔を見合わせる。
紗枝がそんなこと言うから……
気恥ずかしい。
「…い、いこっか。」
「おう。……手ェ、貸して。」


