『ただ今より15分休憩を挟んで…………』
結果発表までの、少しばかりの休憩。
律が私の肩をポンと叩く。
「あたしトイレ!柚も連れション行く?」
「……行かない。」
「…そうだろうねぇ。すっげ間延びした顔して。余韻にひたりすぎ?」
「だってりっちゃん!結の声…ちゃんとここまで届いた!もう、練習の賜物だよぉ~。」
「……は?そっち?自分の達成感で紅潮してんのかと思った。じゃ~、行ってくんね。」
「ん、行ってらっしゃい。」
そうだよ、りっちゃん……。
こんな興奮…我慢できる訳ないじゃない?
今だって手が震えてる。
自分じゃコントロールできないくらいに……
覚めない、
覚めることのない、
まるで夢のような……
一日。
「…ちょっとごめん、通して。」
「……?」
聞き覚えのある声が、次第に近づく。
「柚。ゆーうっ」
私の名を呼ぶ声に、周囲がその主を一斉に見ては……
私の顔と見比べる。
「…ちょっとこっち。来て。」
佳明が……
照れ臭そうに、うなじをさすりながら…
待っている。
「…待って、待って。…ごめん、通らせて。」
座っている他の生徒たちにそう断って…
佳明の元へと向かう。
「…お疲れさん、少し…あっちで話そう。」
にっこりと爽やかな笑顔……。
繋がれる手。
その温もりにひかれながら………
私たちは、肩を並べて歩く。
「…すごかったな。」
体育館を出て、水場にもたれかかるようにして立つ佳明が……
優しく微笑む。
「…うん。なんていうか、どのクラスも凄すぎて…感激。」
「俺は柚の伴奏に感激だったけどな。いつの間にかあんなに弾けるようになってて…、しかも、なんつーのかな……。笑うなよ、…一番…上手かった。」
笑うどころか……
嬉しいばかりだよ。
顔真っ赤にして……。
「ん。ひいき目だとしても嬉しい。」
「ひいき目なんてない!」
「…………。」
あれ……、
むきになってる。
本気で言ってくれてるんだね……。


