最後にピアノの独奏が流れ……
指揮者が拳を握ると同時に、ピタリと音が止む。
一瞬の余韻を残して……
拍手の嵐。
降壇するのを見守って……
私達は、立ち上がる。
カイロをポケットに押し込めて、
律と顔を見合わせて……
彼女はコクリと頷いた。
私の前をクラスメイト達が歩き……
私と律は、最後に登壇。
椅子を弾き、ピアノの前に座る。
楽譜は……
ない。
大きく…深呼吸を繰り返す。
………と、
目の前に広がる音符の羅列……。
「…………!中道っ。」
すぐ側に……
中道が立っていた。
「いつも通りいこうや。」
「……うん!」
間に合った……!
大きな安堵感。
肩の力が一気にぬけていく。
私は開かれた譜面をじっと見つめる。
「…………!…結……。」
そこには……
楽譜の終わり、最後の和音の傍に…
かわいい女の子のイラストと、
『上手だったよ!がんばった!』
そんな文字が…描き記されていた。
……結らしいや。
さり気なく気遣いができるのも、不器用な優しさも……
彼女らしくて、この上ないくらいに、私に力を与えてくれる。
私は……
ラッキーだ。
こうして助けられて…
いつも現実に向き合うことができる。
ありがとう、結……。
拍手が起きて……
私は、鍵盤に手を置く。
そして……
真っ直ぐに、中道の方へと……顔を上げた。
目と目が合って。
中道が……頷く。
指揮棒が動いたその瞬間……
迷いなく、
私はこの手を……
降ろした。


