合唱の順番は、実行委員によるくじ引きで…既に決まっていた。
私達は、4番手。
早くに出番が回ってくる。
一曲5分程度と考えれば……
あっという間にその時は来る。
1番手のクラスの生徒達が……緊張の面持ちで、登壇する。
伴奏者がピアノの椅子に座り……
最後に、指揮者が真ん中に立った。
一礼した後……
拍手が沸き起こる。
そして………
静寂に包まれていく。
固唾を飲んで、それを見守る私には……
苦しいくらいに、その緊張が伝わってきた。
ピアノの音に合わせて、各パート、最初の音の確認。
そして……
指揮棒が振られる。
流れるような滑らかな旋律………。
タッチのしっかりした伴奏。
すでに圧倒されていたのは私だけではなく、隣りの律も、口を半ば半開きにしたまま……
聴き入っていた。
隣りの芝は青く見えると言ったものだが…
まさに、その通り。
「…このクラス、上手くない?」
きっとこの場では、全てがそう聴こえてしまう気がした。
ドクドクと脈打つ心臓の音が……
私の思考を妨げている。
「ヤバい、緊張してきた……。」
カタカタと小さく震える指先が……
次第に冷たくなるのを感じていた。
大丈夫、
大丈夫……。
中道はきっと間に合う。
それに……
何度も練習してきた。
……この日の為に。
私はキョロキョロと周囲を見渡す。
不意に……
ある生徒と、バッチリ目が合う。
『大丈夫だよね、……結。』
「もう一人の私」に…心の中で、問い掛ける。
その相手……
結は一度頷くと、一生懸命手を擦り合わせて何かジェスチャーをした。
「……あ……、そっか。」
私はポケットに忍ばせた物を……
そっと取り出した。
そう……、
今朝結が持たせてくれた、ホッカイロ。
『効果てきめん』
そう結が豪語していた通り…
袋を開けて握りしめた瞬間から…
ほんのりとその温もりが伝わってきた。


