As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「……ありがとう。けど、これは私のミス。肝心な時に身体壊して、おまけに確認も怠った。その結果がこれ。これ以上……みんなをがっかりさせたくない。」



「…………。お前の気持ちは……よーくわかった。だから、今すぐ体育館に向かえ。」



「…え?何言って…。」



「俺が……、取りに行く。」



「……え?」



「本当に最悪のケース。もしお前が間に合わなかったら、あいつら歌を歌えない。けど、指揮者はいなくても…なんとかなる。」



「駄目だよ!みんなアンタを見ながら歌ってるんだから。」



「なら、代役たてればいい。音楽かじった奴なら、ある程度誰でもできる。けど…、あの曲を弾けるのは、お前だけだ。代わりはいない。」




「…………。」



「大丈夫、お前ほどじゃあないけど、俺も案外足には自信ある。なんせ1番バッターだったし。」



「………!」




「滑りこみでも何してでもセーフにするから、お前はピアノに集中しろ。今までの練習を…無駄にするな。」





「……中道………。」




こんな時に……


なんて優しい笑顔。



「…じゃあ、時間もったいないから…行って来る。」



「……うん。」



「楽譜はいつもどこに置いてる?」



「ピアノの上。」



「家の人は?」



「店に出てる。」



「ん、わかった。…あ~も~…、そんな顔すんなって。任せとけ!」



「……うん、……任せた。」



「…おうよ!…じゃあ、また後で!」








驚く程のスピードで……




中道の背中は、あっという間に見えなくなった。









『滑りこみでも何してでもセーフにするから、お前はピアノに集中しろ。今までの練習を…無駄にするな。』





中道の言葉をギュッと胸に刻みこんで……




昇降口に、背を向ける。








集中しよう。



中道の言う通りに。





今までで最高の演奏をして……




できればあいつと一緒に、ダブル受賞するくらいに…


いい音色を響かせよう。