途中で……
「…あれっ、柚ちゃんどこ行くの~!?」
荷物を抱えた三井先輩とすれ違った。
「忘れ物をとりに行ってきます!」
「…え。どこに?」
私は…先輩の方を見向きもしないで、一気にその脇を走り去った。
階段を駆け降り……
昇降口が見えてきた。
下駄箱から外靴を取り出し、乱暴に地面へと落とす。
うまく履けなくて、つま先をトントンっと鳴らしたところで……
「待て。お前……、どこに行く?」
腕を掴まれ、その動きを制されてしまった。
「…中道………。」
「お前…、何してんの?」
よく見ると。
中道は肩を上下させていて……
苦しそうに息をついていた。
「……お前なかなか来ないし、りっちゃんに聞いたら探しものしてるって言うから……。」
「……中道………。」
「…どうした?何をなくした?」
「中道。中道……。」
必死な顔して……
まだ私を心配してる。
「落ち着け。どうした?」
私の震える肩をぐっと抑えて……
…言葉を待っている。
「…楽譜がないの。」
「……え?」
「楽譜が……ない。」
「マジで?つーか、お前いつも置きっぱなしにしてんじゃん。」
「…でも…ないんだもん。ねえ、中道。昨日うちら二人で練習した時、私楽譜使ってた?」
「…いや。なかった。なくても間違えなかったし、上手に弾けたじゃん。最悪なくても……」
「駄目。間違えたくなんてない。けど…、けど、もしもそうなった時は……。ねえ、どうしよう、中道。」
「…家にあるの?」
「家用のは…確実にある。」
「今から取りに行ってたら…、下手したら、間に合わねーぞ。開会式ももう始まってる。そんなリスク抱えさせる訳には…いかない。」
「………。」
「音楽の先生とか持ってないか?」
「…ないよ。あの曲歌いたいからって、楽譜わざわざ買いに行ったんだもん。」
「………。」
「情けないけど…、怖くてこのままじゃ弾けない。」
「いっぱい練習してきたろ?自信…もてよ。大丈夫だって俺が保障する。」


