「柚~、楽譜もったあ?」
「うん、大丈夫!家用と学校用あるからバッチリ!」
「…あ、そうなんだ?じゃあ……ホッカイロは?」
「……?なんで?」
「今日、割と気温低いし…、それに緊張して指先ガチガチなるだろうからさ。これ、効果てきめん。」
結が私の鞄に、それを詰め込んだ。
「…大丈夫だよ、いっぱい練習したし。」
「どんなに自信を持って挑んでも、緊張に勝る敵はない!いーから持っていきなよ。」
「……なんか結……」
「ん?」
「お母さんみたい。」
「…乙女に対して失礼な。もうッ、……早くしないと先行くよ?」
「ごめんごめん、待って!」
学園祭当日の朝……
何ら変わらないいつもの光景。
……なんて…、
そうなったのは、結のおかげ。
なぜなら昨夜から、寝ては目が覚め、寝ては目が覚めて…の繰り返し。
夢の中でも……
私はピアノを引き続けた。
結果……
もちろん、睡眠不足。
結はもう起こしてはくれなかったけれど、それがかえって私をシャンとさせる。
いつもみたいに、跳ね起きて……
顔を洗い、
結とお互いの髪をアレンジし合って……、
揃ってお母さんの作った朝食を食べた。
それから歯を磨き、
学校へ行く準備をする。
そこで……
結が私の部屋へとやってきた。
「「いってきま~す!!」」
二人揃って、両親に手を振る。
気合いの入ったお揃いの編みこみが…、
その足どりを軽くしていた。
「まあ、せいぜい頑張ってよね。」
別れ際……
結のキツイ励ましが、より闘志に火をつける。
「…そっちこそっ!」
振り返った結が……
ニヤリと笑ってVサインをした。


