まだ、もやもやした『何か』を胸の中に飼ったまま………。




廊下をずんずん歩いて…


6組の教室の前までやってきた。



「…りっちゃん先行ってて。」


律は振り返ることなく手を振った。



そして私は…


6組のその教室をそっと覗く。




「……なんだ、普通じゃん…。」



友達に囲まれて……



結は笑っていた。




「…………。」




「お。ストーカー?ストーカーがターゲット狙って何か企んでいます。」



明らかに私の背中に向けられた言葉。


……声デカッ。




どうして放っておいてくれないのよ…。




「…うるさいな、馬鹿…。」



相手にする気にすらならなくて、



私はその人…


中道侑の傍を目も合わせず通り過ぎた。




「…上原っ。」



「………。」



「…オイ。」



「……何よ。」



「…お前、靴左右反対に履いてね?」



「…………。」



……今その突っ込み?!


私は念のため足元を見た。



「…あら?」



確かに反対だ。



恥ずかしくなって、無言の中道の顔をチラッと確認する。



「………。」



何、その顔……。





私を真っ直ぐ見る中道は……


あどけない表情で笑う。



面白いものを見つけた少年のような、屈託ない……



そんな、笑顔。




……いやいや騙されちゃいかん。


早くこの場を離れないと…。




踵を返し、中道に背を向ける。





そして……


ダッシュ!!



逃げ足だけなら学校で私に敵う人なんていない。



だから……




「…ちょっと、待て。」



「……え?」




腕を掴まれ、身体にブレーキがかかる。



…何が起こった?




「…お前、何かあった…?」



「……は?」



中道はいたって真面目な顔つきで……




逃げた私が愚かだった気さえする。



だって。


こんな簡単に捕まるもん?




「何かあったろ。」



「………。」



何かって何よ。


そんなの私が知りたい。



私が知りたいことを…


なんでアンタがきにする?




「…離して。」



「………。」



中道はパッと手を離す。



「………じゃ!」



私は……



一目散に駆け出した。