「…うん。初めてだし、ヤバいなコレ。朝からテンション上がる。」



「……うん。」




確かに…。


でも……
まるで私達の間に、何もなかったかのようなこの展開。



「…………。」



学校に着くまで、終始普段通りの様子の彼に……



私は、戸惑いを隠せなかった。









「今日は朝からどうしたの?超ラブラブじゃん。」



わざわざ私のクラスまで送り届けてくれた佳明がさった後……



すぐさま律が、私の肩を叩いてきた。



「……律…。ね、どうしたんだろう。初めてなんだけど…こんなこと。」



「…あんま嬉しそーじゃないね。」



「いやいや、嬉しいけどさ……」



なんていうか……



妙なプレッシャーがのしかかるっていうのか……




そわそわしてしまう。








「…あ、おはよ~、中道。」



「………!」



律が呼ぶその名前に、私はつい身構えた。



「…おはよー。」



中道がこっちを見た。



「……………。」




私は……

思い切り目を逸らしてしまう。




「お前さあ…、朝から感じわりーぞ。」



奴の拳がコツンと頭を掠めた。




「…悪かったね……」



顔を上げて振り返ったけど……



中道は既に違う友達と話していて、こっちを見ようとはしなかった。




「……馬鹿…」


そんなに露骨に避けることなんてないのに。


感じ悪かったよな…、絶対。





HRを終えると、生徒たちが廊下に並び始めた。




「…おまえ俺よりデカくなってね?」



「…え、マジ?」



列の後ろから男子の声。



中道が…

男子とじゃれ合っていた。



「…成長期か!つーか、ますます黒くなってんぞ。」


「仕方ねーだろ、野球部だし。」




……あ。
ホントだ…。前より顔が浅黒くなってる。



「中道くん、今すごい人気あるんだよ~。先輩とかからも結構告白されたり。」




……ん?
あれに見えるは野球部女子マネの柏木…。


ってかアンタ、隣りのクラスでしょうよ?


早く並べって。



「おま…、余計なこと言うなよ。」



あ…、デコピン。


中道って…
誰にでもあんな感じなんだ……?



「…だって~、ことごとく女の子振るじゃん?やっぱり噂のコと付き合ってんの?」