里中くんはにこにこと……


結に近づく。



「てか、なんでそっちが結だってわかるの?」



里中くんにも、同じ質問をぶつけてみる。




「え?だって今中道といい争ってたでしょ?そっちが柚ちゃんだとしたら……。」



「……なるほど。」



…うん。それなら…納得だ。



だって…、



いとも簡単に見分けられる人なんている?



…ううん、いない。




本当に……、



あんたはなんなのさ、中道侑……。





「上原。」



「…はい?」



「お前さ、英語の課題してきた?」



「……。課題なんてあったっけ?」



「…やっぱりな~、お前寝てたもん。やっぱ知らなかったか。」



「…え、え?ヤバ…。ただでさえ昨日叱られてマズいのに…。どんな課題?」



「…教科書2ページ分の訳。」



「…嘘でしょ~…、間に合わないじゃん。」



「うん。だから…、油売ってないで早く行くぞ。」



「……え。」



「いーから、ホラ、早く。」



「…え?いや、あの……、ハイ。」



「…じゃあね、結ちゃん。…と、里中。」



「「…………。」」




呆然とその様子を見ている結と里中くんをよそに……
中道は私の腕を引いてどんどん歩く。





「ねえ。」



「………。」



「…ねえってば!」



「…何だよ。」



「わざわざ6組の前まで来て、何してるのよあんた。」



「……なにって…、礼をしに。結ちゃんと…、お前に。」



……ん?
なんか……、素直?



「里中が来たのは…予定外だったけどな。」



「……ふ~ん…。」



「…で、俺昨日英語訳してきたから……。」



「………?」



「…貸してやるよ、俺のノート。」



中道のノートを?


…私に?!



「…いや、いい!遠慮しとく。自分でやるし!」



「…はあ?!」



「…どうせまた何か企んでるんでしょ?その手にはのらな……」



「…ははっ!…しねーよ!別に!」



「………。」



中道が……、


眉を垂らして…

笑ってる!



「…俺はどんだけ冷たい人間になってんだ、お前ん中で。」