「…柚……、あのさ……」




中道が口を開きかけたその時……




「……柚!!」





誰かに……


名前を呼ばれた。




…心臓が…、跳びはねる。


なぜ、こんなタイミングで………






「………あれっ?中道~?何でお前が柚といるんだよ。」



佳明が現れるの……?!







「…ああ、結いるかなって思って来たら…、偶然、コイツと会った。」




コツンと頭をたたかれる。



「……ふ~ん。…で、結ちゃんは?」



「…残念ながら、留守みたい。」



「…そっか。つーか……、マジ紗枝ちゃんに感謝だな。柚の浴衣姿、見逃す所だった。」



「……それでわざわざ?」



「……おうよ。まさか…先客がいるとは思わなかったけどな。」



佳明は……
中道を軽く睨んだ。



……誤解してる。


完全に、誤解してる。




タイミング良く……、中道の携帯が鳴った。





「わり…。」



中道は私たちに背を向けて……
電話に出た。




「……もしもし。……え?今……?…お前ん家の前。……………は?何でって……。……うん、そう。………じゃあ待ってて。……いいから、そこで待ってて。……うん、……じゃ…。」


電話を終えた中道が、ぐるんとこちらに振り返った。




「…あいつまだ河川敷だって。今から迎えに行ってくる。……じゃ、そういうことで…。」




「…待てって。」



立ち去ろうとした中道の腕を…、



佳明がギュッと握っていた。





「……逃げんのか?」




「……は?なんだそれ……。」




「…お前の想いはそんなもんか。」



「…………。」



「……悔しくないのか?」



「………何の話だよ。」



「……俺は…お前に負けない。」



「………?」




「……お前にだけは負けたくない。……譲らねーからな。」




「……そうか。いいと思う、そのぐらいの勢いがなきゃあ張り合いねーからな。」



「…………!」



「……じゃあな、柚。結構ドキっとしたよ、浴衣。」


「……ばっ…、バカ…、変態ッ!」