「…あ。気づいてた?柚は興味なさそうだから、気づかないと思ってた。」



「…だって、トルコ桔梗……。」



「…ああ、アレね。私の一番好きな花。綺麗だったでしょ?」



「…うん、ものすごく…。」



「…柚、知ってる?」



「…え?」



「トルコ桔梗ってね、高校野球の記念花だって。」



「………知らない…。」



「…うん。だからね…、願掛けしてたんだ。」



「………。」



「…野球部と、里中くんの活躍を…。」



「…結……。」



アンタ、そんなことまで考えて…?



「…まさかこんなに勝ち上がるんだったら、もっと遅くに飾れば良かった。昨日…萎れているの見つけて捨てちゃったの。ご利益あったかもしれないのに…。」



結は……


私とは違う。


いつもいつも周りに気を遣って、優しくて、女らしくて……。


なのに……







「結…。ごめんね。」


「え~?」


「気づけなくて…、ゴメン。」


「なに謝ってるの~?私が好きで始めたことだもん。柚には関係ないじゃん。」



「…ううん、何も知らないで偉そうなこと言ってた。絶対結を…傷つけた。」



「…え?何の話?」



また……、
わかってて忘れたフリしてる。



そういうことだけは…


私だってわかるんだから。




「…ねえ、柚は応援してくれる?私の……、夢。」



あんたが初めて自分で選んだ道だよ。


応援しないわけないじゃない。



寂しいけど、誰よりも応援したい。



その気持ちに……



偽りはない。



「…もちろん!」



「……良かった…。」



「…え。」



「柚に反対されるのだけが…一番怖かった。柚に反対されたらさ、私は諦めたかもしれない。」



「…そんな弱い意思じゃないんでしょう?」