As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「手先も器用だし、センスいいし。」



結なら…
一流のヘアースタイリストになれそうだよ。


カリスマ性…?


そういうのを持ってるじゃない。



「…本当にそう思う?」



「…うん、冗談ヌキで。」



「…そっか。…ありがとう。なら…、なれるかなあ…。」



「……?」



「…柚。私ね、美容師にはならない。」



「…え。だって…、二人でお店つごうって…」



「…それは、柚に任せるよ。」



「………。」



「私ね、やっと見つけたの。」



「…ナニ…、なに言って…。」



だって…


あんなに嬉しそうに笑っていたじゃない。


二人で誓ったじゃない。



「…私…、フローリストになりたいんだ。」



「…フローリスト…?」


…って、何?



「フラワーアレンジメントってあるでしょ?それを職業にするようなものかな。花で色んな場所や物をデザインする。私だけの世界を…いつか作っていきたい。」



「そんなの…、初耳だよ。」



「…ん。柚に言うのは初めてだね。」



「…じゃあお母さんたちは……」


「…知ってる。」


「…何て…?」


「好きにしなさいって。」


「……そんな…。」


「私ね、今フラワーアレンジメントを習っているの。」


「………。」



そんなの……
知らない。



「知らなかったでしょ?柚はいつも部活に一生懸命で…周りのことには疎いから。」



ズキっと…
胸が痛んだ。



そう……、
私はやっぱり……結のことをちゃんと知らなかった。
知ろうとはしなかった。



「…もしかして帰りが遅かったり休日に出掛けるのも……」



「うん。教室に通ってたり…、後は無理矢理中道くんに会いに行ったりね。」



いつもデートしてたわけじゃ…なかった。



「……。もしかして…!玄関の花!あれも結が…?」