「もう二度と言わないけど。…だからあいつとお前が付き合って…悔しい想いもした。」
「………。」
「さっき…、実は死ぬほど嬉しかった。お前だけは俺の味方だって…。」
「…うん、言った。」
「…野球にピッチャーというポジションにしか目を向けられなかったのと同じで…、俺は、お前の中での俺のポジションが変わるのが怖かった。だから…、色んな意味でお前の言ってることは当たってたんだ。」
「………。」
「…お前が味方してくれんなら、怖いものなんてないかもなあ…。奪うくらいのきもちで、もう一度…立ち向かうこともできる。」
「……中道。」
「…だから……、見てろよ。お前だけは目を逸らすな。」
「……うん。」
「……その代わり、俺も目ェ逸らさない。見守ってやるから、お前んとこ。」
「………。」
「…逃げんなよ。」
「…あ、アンタこそ。」
「…ったく…、こんな勝手な女に涙見せるなんて一生の不覚だろー。」
「…私だってそう思ってたよ。でも今は…アンタの前で良かったと思ってる。」
「前言撤回。俺はきっと…、お前の前でなら、いや、お前の前だけでは泣けるのかもな。」
「…素直じゃないねぇ。」
「お互い様。」
それから私達は……、
同時に、グラウンドに目をやった。
「…最後の攻撃だ。」
「…うん。」
「…見守ってやろう、あいつの姿。」
「……うん。」
9回裏ー……。
最後の攻撃。
試合に出れない佳明は、今きっと……
誰よりも辛いのかもしれない。
なのに同じこの空間で……
私と君は、罪を重ねる。
君の左手と、
私の右手がぶつかったその瞬間に………
その手を握り合う。
どちらともなく、
まるで当たり前であるかのように…。
友達の枠を越えたわけじゃない。
けれど君はやっぱり特別で……
握る手から伝わる気持ちがある。
君もきっと…
同じことを思っているのだろう。


