As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「…上原……?」



その頬に…


一筋の涙。



「…何で泣いてるの。」



「…泣いてねえよ。」



「泣いてる!」



「………。」



「…泣いてるじゃん。」



「…うるせーな。俺はただ…、あと少しで試合が終わるってのに交代させられたあいつが気の毒だって…。最後まで投げたかったろうに。」



「………。それだけ?本当にそれだけなの?そんなんでアンタが泣く?!」



ねえ、中道。
かっこ悪くたっていいよ。


ひとつでも泣き言あるなら言ってよ。


弱さを見せる相手がいなきゃ……


アンタが辛くなるだけじゃん。


いつか私がそうしたように、私にくらい…


本音でぶつかってよ。



「…あいつと…約束したんだ。まだガキの頃だし覚えてもいないと思うけど…。」



「………!」



「甲子園で会おうって。」



「………。」





「…すげーよな、ホントにここまで来たんだ、あいつ。」



「…………。」



「…勝てるって信じたい。」



「……うん。」




バットがボールをとらえるその音が……



球場に響いた。



私達は一度グラウンドに目をやって……



それから、また、向き合う。



敵チームのスタンドが大いに沸き立つその情景を目の端でとらえながら。



「…何で俺はあそこにいないんだろう。…とか…、俺ならこうしただろうとか…。何かさ、わかんねーんだ。なのに………」



「アンタ、未練たらたらじゃん。要するにアレでしょう?あんたは…なんだかんだ野球が好きで、やっぱりやりたいんじゃないの?」



「…もう投げれないのに?」



「…野球はピッチャーだけじゃない。」



「………。」