As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

得点は動かないまま…



最終回を迎えた。


9回表…。


今大会、全てひとりで投げてきたこともあるだろう。


ここにきて、佳明の投球が…乱れてきた。



8回には同点ランナーを出したものの、何とか守備でカバー。




四球が回を増す毎に…


増えてきている。




1アウト、ランナー2塁・3塁。



カウント、3ボウル1ストライク。



5球目…と思ったら、3塁ランナーが走り出し、牽制球が投げられた。



タッチアウト!



…が、しかし……



判定は、ピッチャーのボーク。


審判団の協議の結果…ワインドアップからの牽制…。つまりは振りかぶってからの牽制であったために、反則をとられた。


それは何を意味するか…?


私は得点板を恐る恐る見上げた。


【1】という数字が…敵チームの箇所に表示された。


そして…2塁ランナーは3塁に進塁。


佳明は……


呆然としているようだった。





ピッチャー交代を余儀なくされる。



「佳明……。」



ベンチに戻った彼は、肩を落とし……



そして、それでもマウンドを…、じっと見守っていた。



「………。」



私は……



あいつのことが気になり、ぐるっと彼のいるその方向へと体を向けた。




「…………。」



いつの間にか……



奴は立ち上がっていた。




ねえ、今君の瞳に映っているのは……




「……ちょっと…、トイレっ!」



「…ええっ?」


今行くか?といった顔つきの二人に背を向けて……




私は、走り出した。



どこに?



自分だって驚いている。



だけど、
だけど………!





「…中道っ!」


私の声に……


あいつが振り返る。