As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

場内アナウンスが注意事項を述べる。



そして…、


両チームが一列に並んだ。



両者挨拶を交わし、それぞれの一歩を踏み出してゆく。




『〇〇高校対××高校の試合がまもなく開始します。』


「わあ、始まるっ。」


「…うん!」


ゴクリと…
息をのんだ。



『まず先に守るります〇〇高校のピッチャーは、里中佳明くん。キャッチャー…鈴木康太くん……』




アナウンスが、先発メンバーの名前を読みあげる。


真っ先に…佳明の名前が呼ばれた。


それだけで…


何だか感動だ。



審判のプレイボールの合図で、けたたましくサイレンの音が響いた。


…と、ほぼ同時に…


一球目がキャッチャーのミットにおさまる。


初球…、ど真ん中のストレート。


「…よしっ。」


私はホッと胸を撫で下ろした。



二球目…。


僅かにバットの先を動かすが…
やはり手を出さない。
やや高めのストレート。



…ボウル。






3球目……



バッターのすぐ前で球が落ちる。


…フォーク?


バッターは空振り。



1ボウル2ストライク。



「……テレビと違って球種が全然わからないっっ。」


思わず叫ぶ私に……


「いやいや、テレビで見てわかる人、この学校の女子じゃアンタくらいでしょ。」


律がすかさず突っ込んだ。



バッターが追い込まれた第4球は……。


ファウル。



たった一度バットに当たったくらいで、私は大袈裟なくらいに声を上げてしまった。


「うるさい!」


今度は結に突っ込まれた。




それにしても…


心臓に悪い。


ああ、どうか打たないで!


…そんなことを願っているうちに…



バッターアウト。



「…よしよし、いいぞ~!」




一回表は、三者凡退でチェンジとなった。